東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
「すみません」

声をかけると、男は私の方に視線を向けた。

「苗のニセモノ…」

そう呟いた男に、
「誰がニセモノですか!」

私は言い返した。

ニセモノも何も、そっちが勝手に勘違いをしてきたんでしょうが!

顔も雰囲気も例の彼女と何もかも違うはずなのに、何で間違えたのよ!

心の中でツッコミを入れながら、
「忘れ物です」

私は男に指輪が入った小さな箱を差し出した。

「…ああ、わざわざすまなかったね」

男は呟くように返事をすると、私の手から箱を受け取った。

箱を開けて中身の確認をしたかと思ったら、
「はあー…」

男は大きなため息をついて、ガックリと言うように肩を落とした。

「――違う自分を演出するために眼鏡を外して挑んだのが悪かったな…」

あまりの落ち込みようが心配になり、私は彼の隣に腰を下ろした。
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