東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
このまま放って置いたら自殺でもするんじゃないだろうかと言う不安が頭をよぎった。

彼は箱の中の指輪を見ながら、ため息を繰り返していた。

「給料3ヶ月分だったのに…。

指のサイズだって調べて、気に入りそうなデザインを探して作ってもらったのに…」

「あの、大丈夫ですか…?」

ブツブツと呟いているその落ち込みように、私はどう対応すればいいのかわからない。

とりあえず…苗さん、戻ってこないかな?

考え直したとか何とか言って、戻ってこないかな?

そう思いながら彼女の姿を探したけれど、どこにもそれらしい姿はなかった。

参ったな…と思った矢先、
「決めた!」

男が突然大きな声を出したかと思ったら、ベンチから立ちあがった。
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