東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
「ああ、すまない」

彼は思い出したと言うように言った。

「えっ、はい?」

何が“すまない”だろうか?

「そう言えば、君の名前をまだ聞いていなかったことを思い出したよ」

彼はそう言うと、再びベンチに腰を下ろした。

「僕は村坂周平(ムラサカシュウヘイ)、君は?」

彼――村坂さんは自分の名前を名乗ると、私に聞いてきた。

「えっと、桜井つづりです…」

私は呟くように、自分の名前を言った。

「桜井さんね。

改めて聞くけど、桜井さんは今週の水曜日は何か予定があるかい?」

「いや、予定はないですけども…ああ、でも働いているので」

村坂さんからの質問に答えた私に、
「働いていると言う点では僕も同じさ。

できれば、5時以降からの時間はどうなのかと聞きたい」

彼はそう言った。
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