きみは宇宙でいちばんかわいい
「……柊くん、ほかに好きな人がいるの」
いまごろはきっと梓ちゃんのお店に到着しているであろう、彼のことを想像したら、お腹のなかがキュッとせまくなる感覚がした。
だって、ひょっとしたら、きょうもあの子が来ているかもしれない。
一瞬にして柊くんの視線をひとりじめしてしまう、とても綺麗な、まるで天使のような、あの女の子。
本人に直接の確認をとったわけでもないから、確信はない。
だけど、柊くんの好きな人というのは、たぶん、絶対に、あの子で間違いないと思う。
「それなのに……わたしが柊くんを好きだなんて知ったら、困らせちゃうと思う、から」
「なんで、困んの」
「だってね、すごく、優しい人でしょう?」
しゃべりながら、胸がチクチクと痛んで、たまらない。
これ以上の質疑応答は耐えられない気がして、思わず目を逸らすと、彩芭くんはなにかを察してくれたのか、「ふうん」と呟いたっきり黙りこんでしまった。
それから、しばしの静寂。
店内に流れているお洒落な洋楽が、妙に耳について、そわそわしてしまう。
もういちど勉強に取りかかろうかとも思ったのだけど、ひとつも集中できる気がしなかったので、シャーペンを拾いあげようとした手を、そっと引っこめた。