きみは宇宙でいちばんかわいい


「それにね、わたしたちの名前も、“ななこ”と、“いろは”なの」

「え?」

「ふたりで、なないろ、になるの」


口に出してから、やっと我に返る。

もしかすると、いま、わたし、かなり調子に乗ったことを言ってしまったかもしれない。
というより、けっこう気持ち悪いことを口走ったのかも。


案の定、あんなに楽しそうにしてくれていたはずの彩芭くんは、急に黙りこんでしまった。

いっきに、とてつもない後悔が押し寄せる。

これはただちに訂正とお詫びが必要だ。


焦って再び口を開きかけたとき、ちょうど、彩芭くんのほうも顔を上げて、わたしのほうを向いたのだった。


「きなこちゃん。テストが終わったあと、夏休みに入ってからも、こうやって、学校以外のところで会おうよ」

「え……、夏休み?」

「うん、そう。今度はテスト勉強じゃなくてさ」


両のポケットに手の甲を入れこみながら、彩芭くんは軽快にうなずいた。


「あっ……、そっか、うん。たとえば、柊くんとか、あと、朝香ちゃんとか、誰か誘って、ってことだよね?」


わたしたちにとって共通の友人を、何気なく挙げてみただけだったけど、もし本当に実現できたら、それってすごく素敵かも、と思った。


柊くんと朝香ちゃんの仲の良さは未知数だけど、去年は同じクラスだったというし、人当たりのいいふたりのことだから、きっと問題はないだろう。

それに、そのメンバーで会うとなると、彩芭くんと朝香ちゃんの距離も、ぐっと縮まるかもしれないし……。

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