きみは宇宙でいちばんかわいい
自分から墓穴を掘りにいってしまうところ、早急に直さなければ、と思う。
ついでに、その後うまく取り繕う術なんかも、できれば身に着けておきたい。
図星を突かれ、身動きがとれなくなっている妹に、兄は、人の悪い笑みを浮かべるばかりだ。
「なに? さては、お兄ちゃんに言えないような相手?」
「ちっ、ちがうよ。普通に、クラスの男の子だから」
「マジで? つきあってんの?」
「つきあってないってば……」
「ほーほー。じゃ、いま、つきあう前の、いい感じのところ? 最高に楽しい時期じゃん」
「ねえ、憶測だけで勝手に話進めないで。ほんとにそういうんじゃなくて、その子も、お兄ちゃんと同じなの。わたしのこと、からかって、おもしろがってるだけなの」
彼についてしゃべっていたら、ポコ、と久遠彩芭くんの顔が脳裏に浮かんできた。
その美しい造形は、うちのお兄ちゃんとは似ても似つかないはずなのに、目の前にある意地悪な表情と、なぜかピッタリ重なるのだった。
「あー、なるほど。つまり、ななはそいつに遊ばれてんのな」
「うう……はい、そうです」
この楽しげな顔も、軽快な声も、わたしにはもう、恐怖の大魔王にしか見えない。
なぜなら、いまの言葉で、お兄ちゃんがいつもわたしで遊んでいるというのが、暗に立証されたことになってしまった。