きみは宇宙でいちばんかわいい
ひとまず、4階建てのモールの最上階まで行き、ぐるりと一周まわったら、ひとつずつフロアを下降していくルートをたどった。
彩芭くんは、アロマや、レザー専門店といった、お洒落なテナントで足を止めることが多かった。
普段、自分では絶対に入らないようなお店に緊張する瞬間も多々あったけど、それ以上に、ひとつひとつが本当に新鮮で、すごく楽しい。
彩芭くんに出会ってからというもの、これまで知らなかったことや、できなかったことを、かなりたくさん、それも、いたって簡単に、ぽんぽんクリアしていけている気がする。
「きなこちゃんは、どっか、気になるところないの?」
「うん、わたしは、大丈夫だよ」
「大丈夫、じゃなくてさ。俺も、きなこちゃんの好きなもの、知りたいんだけど」
そう言われても、なぁ。
流行にはかなりニブいほうだし、
ファッションにも疎いから、ブランドだって、詳しくない。
いつも、きっと、必要最低限で生きている。
なにかをものすごく欲しいと感じることも、ほとんどないし……。
「……あ、クレープ」
ちょうどそのとき、パステルピンクのかわいらしい看板がふと目について、なんとなく足を止めてしまった。
「ねえ、彩芭くん。それなら、あそこのクレープ、いっしょに食べたいな」