きみは宇宙でいちばんかわいい
かなり歩いたおかげで、お昼ごはんも、たぶんけっこう消化できた。
そろそろ夕方に差しかかる手前の時間帯だし、おやつを食べるには頃合いだと思う。
それに、これくらいであれば、彩芭くんもそこまで気負うことなく、わたしにオゴられてくれるんじゃないか、と思ったのだ。
「なるほど。きなこちゃんは、スイーツが好きなの?」
「えっ?」
「ブックカフェもさ、行くたびに、シフォンケーキとか、パウンドケーキとか、いろいろ食べてるじゃん」
たしかに、そういえば、そうかも。
正直、とくべつスイーツが大好物というわけではないのだけど、べつに否定する理由もなかったから、うなずいておく。
そして、いざクレープ屋さんに……
と、思いきや、彩芭くんはなぜか、ぐるりとその場で回れ右をしたのだった。
「でも、ごめんけど、クレープは今度でいい?」
「えっ……どうして?」
「俺、ちょっと行きたい店があって、実はもう予約しちゃってんだよね」
ショッピングモールを歩いているうちにはぐれたまま、長いこと離れていたはずのふたつの手が、驚くほど自然に、もういちど繋がっていく。
正確には、彩芭くんのほうが、わたしの手をすくい取ったのだった。
「俺が、日本でいちばん好きなアフタヌーンティー。絶対、きなこちゃんも、気に入ると思うよ」