きみは宇宙でいちばんかわいい
「――その最低な演説、いつまで続ける気?」
はっとして顔を上げた瞬間、薄茶色の瞳に、まんまと捕まってしまった。
「なあ、きなこちゃん。いま、自分がなに言ってんのか、ちゃんとわかって、しゃべってる?」
いつも変わらない、透き通った美しさの真ん中に、静かに宿っている、どこまでも強い光。
すごく真剣なまなざしだ。
まっすぐ見つめられて、逸らせないどころか、思わず息をのんでしまう。
彩芭くんのこんな顔を見るのははじめてだった。
ひょっとしたら、なにか怒っているのかもしれない。
わたしが、怒らせてしまったのかもしれない。
だけど、そう思ったときには、いつも、もう遅い。
「ちょっと来て」
「え……」
ほとんど強引に手首を掴まれたかと思えば、いつのまにか、椅子から引っぱり上げられていた。
「やっぱり、あともうちょっと、俺に時間ちょうだい」
さっさとお会計を済ませ、足早にお店を出た彩芭くんは、落ち着いているのに、とても威圧的な声で、そう言った。
もちろん、わたしにノーと言わせるつもりなど、ひとつもないのだろう。