きみは宇宙でいちばんかわいい
もはや何なのかもよくわからないけれど、とにかく彼が怒っている事実に対して、こちらが謝るタイミングを見失うほど、彩芭くんは恐ろしくずっと無言だった。
そのうちに、いつのまにか、民家と呼ぶには少し豪勢な気もする、昔ながらの日本家屋といった雰囲気の住居に、わたしは連れてこられていたのだった。
表札を確認している余裕なんかない。
でも、普通に考えて、おそらくここは、彩芭くんの自宅なのではないかと思う。
言われるがまま、サンダルを脱ぎ、手を引かれるがまま、長い廊下をまっすぐ進んだ。
やがて、いちばん奥に位置している扉の前で足を止めた彩芭くんがドアノブを引っぱると、むこう側には、あまり統一性のない、どこかゴチャっとした空間が広がっていたのだった。
だけど、なんだか、それさえも全部ひっくるめて、ものすごくお洒落だ。
「ここに座って」
感心しているまもなく、久しぶりに聞いた彼の声によって性急に座らされたのは、まるでお姫様が使うような、すごくかわいらしいドレッサーの前。
仮に、ここが彩芭くんの自室だとして、男の子の部屋にこんなものがあるのは、なんだか意外というか、かなりめずらしい気がする。
だけど、ほかにも、女の子が着るような洋服や、乙女チックな小物が散らばっているので、ここは、もしかしたら、彩芭くんが誰かと共同で使っている部屋なのかもしれない、と思い直した。
あれ、そういえば彩芭くんって、きょうだいとか、いたんだっけ……
と、考えてすぐ、わたしはあることを思い出したのだった。