きみは宇宙でいちばんかわいい


――そうだ。
彼のもつ、ベージュとグレーを混ぜあわせたような、美しい瞳の色。


いつか、梓ちゃんのネイルサロンで出会ったあの女の子も、まったく同じ色の目をしていた。

やっぱり、あの子は彩芭くんのお姉さんか、もしくは妹さんかもしれない。


彼女を見かけた日の翌朝、気になって投げかけた質問には、結局、答えをもらえていないままだ。


「あの、彩芭くん……」


鏡越しに視線を送りながら、なるだけ遠慮がちに呼びかける。

しかし、なんと、すぐ背後に立っていた彼は、わたしのうなじにそっと触れ、そうかと思えば、そのまま髪の束を作り、ひょい、と持ち上げたのだった。


「ひゃっ……!」


つまり、なぜか、彩芭くんが――わたしの髪を結わえている。


「え……、えっ、なに……」

「じっとしてて」


そう言われても、ぜんぜん意味がわからないし、少しくすぐったいし、すごく緊張してしまって、微動だにしないというのは、なかなか難しい注文だ。


だけど、おろおろしているうちに、気づけば頭の高い位置に、綺麗なポニーテールが出来上がっていた。

男の子だとは思えないほど、彩芭くんの手つきはとても器用で、無駄がなく、完璧だった。

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