きみは宇宙でいちばんかわいい


「きなこちゃん、すごく艶のある黒髪だし、やわらかい毛質してるから、シンプルなポニーテールがすげー映えるんだよ」

「え……」

「リボンは、ワンピースに合わせて、エメラルドグリーンにしておこう」


あれよあれよというまに、けっこうなボリューム感のあるリボンを結び目に巻かれたあと、いつのまにか用意されていたヘアアイロンで、毛先を整えられる。


ああ、これは、なんの魔法だろう?

ただ髪を上げただけなのに、自分だとは思えないほど、すごく、かわいい。


おかしな感動すら覚えてしまって、ぽかんとしていると、満足そうに口角を上げている彩芭くんが、ずいっと頬を寄せてきたのだった。


「なあ。これで、どう?」


すぐ隣にいるはずなのに、彩芭くんは、鏡に映るわたしに語りかけていた。


「さっきのリップスティック、塗ってみていい?」


まるで導かれているみたいに、鏡のなかのわたしが、小さく一度うなずく。

すると、嬉しそうに笑った彩芭くんの手が、今度は口元に寄せられた。


「ちなみに、カラーはチェリーピンクな。けっこうビビッドに見えるけど、塗ってみると全然そんなこともなくて、めちゃくちゃいい色になるから」


上唇から、下唇へ、柔らかくて硬い質感が、ゆっくりと、繊細に、形をなぞっていく。

はじめての感覚だった。
冬場に使っているリップクリームと、まったく違う。

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