きみは宇宙でいちばんかわいい
「――きなこちゃん、見てよ。完璧だろ」
彼の言葉を合図のようにして、そっと、目を上げた。
「髪結んで、唇に色つけただけで、女の子はこんなに変わるんだよ」
鏡に映っているのは、たしかに自分なのに、
まるで自分とは、まったくの別人のよう。
ああ、これはやっぱりなにかの魔法だ、と思った。
「か、わ……いい」
「そうだろ?」
「あ……っ、ちがうの。いまのは、その、わたしが、って意味じゃなくて、髪型と、リップの色が、ということでして……」
「ばーか。きなこちゃんがかわいい、で間違ってねーんだよ、それは」
「ち、ちが……、ひゃあっ」
それでもなお、言い訳しようとしたところ、ぐるりと強制的に体の向きを変えられてしまい、思わずおかしな声が出る。
「ほんとに、違わねーから」
いきなり目の前に現れた彩芭くんは、まるでおとぎ話の王子様のように、膝を折り、跪き、そして、とても自然に、わたしの両手を取ったのだった。
「なあ、きなこちゃん。だから、俺がデートに誘った女の子のこと、もう二度と、あんなふうに悪く言わないでほしいんだけど」