きみは宇宙でいちばんかわいい


「俺は、すげー楽しかった、きょう」

「……あの、わたしも、楽しかった、です」

「ほんとかよ」

「うう……ほんとう、です」


嘘偽りなく、本当の本当なのに、あまりにも距離が近く、どぎまぎしているせいで、うまくしゃべることができない。


「彩芭くん、ち、近……」

「うん、知ってる」


じゃあ、どうして、離れるどころか、どんどん近づいてくるの。

だって、このままじゃ、くちびるどうしが、ひょっとしたら、触れあってしまうかもしれないというのに。


「……っ、あっ?」


たぶん、もう、ほとんどすれすれのところだった。

思わず目をつむろうとした直前、下にむけた視線の先で、あるものが目に飛びこんできてしまい、おかげで、意図せず、なんともまぬけな声が漏れる。


「……なに?」

「あの、前も聞いたと思うんだけど、彩芭くん、お姉さんか妹さん、いたりしない?」

「なんで?」

「だ、だって……」


お部屋に、こんなにかわいいドレッサーが君臨しているし、そこかしこに女の子の服が散らばっているし、乙女チックなアイテムだってそこらじゅうに点在している。


それに、ベッドの横に転がっている、あのネイルチップのケース。

あのロゴは、梓ちゃんのサロンのもので、きっと間違いないと思う。


だから、どうしても、確認せずにいられなかった。

もし、あの子が彩芭くんの姉妹だとしたら、柊くんの好きな人の正体が、いまここで、やっと判明することになるのだ。

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