きみは宇宙でいちばんかわいい
「あのね、お姉さんか、妹さん、きっと、柊くんのお姉さんのネイルサロンの、お客さんじゃないかと思って。わたし、一回だけ、会ったことがある気がするの。彩芭くんと同じ色の目をしてた――」
「――きなこちゃん」
そこで、しゃべりつづけるわたしを制止するように、彩芭くんがいきなり明瞭な声を出した。
「俺も、お気に入りのネイルサロンに行ったとき、きなこちゃんと織部が一緒にいるところに、遭遇したことあるよ」
「え……? それは、どういう……?」
「すげー大量の、野菜かなんか、持ってなかった?」
「え、うん。たしかに、そうだけど……、なんで、それを彩芭くんが、知ってるの」
なにも答えないまま、彩芭くんは音もなく立ち上がると、ベッドの脇に位置している、あふれそうにいっぱいのクローゼットを開け放ち、そこから一着の洋服を取りだした。
そして、その下の引き出しから、なにか黒い物体を引き上げたのだった。
「すぐに用意するから、むこう向いてて」
わけもわからず、言われるがまま、回れ右をする。
突然、どうしたのだろう。
背後でいったいなにが行われているのか、聴覚から入ってくる情報だけでは、なかなか想像がつかない。
「……はい。もう、いいよ」
やがて、おそらく、数分後。
再びふり返ると、
そこに、久遠彩芭くんの姿は、見当たらなかった。