きみは宇宙でいちばんかわいい





わざわざわたしをうちまで送り届けてくれた彩芭くんは、あんなにかわいい女の子でいたのがまるで幻だったみたいに、いまは、また、完璧な男の子の姿に戻っている。


「きょう、勝手におじゃましちゃったから、今度は絶対にご挨拶させてね」

「んなの、いいよ。うちのじいちゃん、俺が日本の女の子なんか連れてたら喜んでイロイロうるせーから、逆にきょうはいなくてよかったと思ってるくらいだし」


やはり、あの日本家屋は彩芭くんのおじいさんのもので、彩芭くんは、こっちの滞在中には、いつもあそこをホームとしているらしい。


「ほんとに、送ってくれてありがとう。彩芭くん、いったんおうちに帰ったのに、わざわざごめんね」

「なんで? だって、送り届けるところまでが、デートだろ」


やはり、さすがの、イギリス仕込みである。


「……っていうのは口実で、俺がただ、きなこちゃんと一緒にいたかっただけ」


しみじみ感心しているところに、追い討ちのような言葉が飛んできて、ひっくり返りそうになった。


もし本当にからかわれているのだとしても、こんなわたしにはもったいないような数々を、きょうは、あまりにもたくさん、受け取ってしまった気がしている。

だから、わたしも最後くらいは、感じたことや、思ったことを、言葉にして、きちんと伝えておきたい。

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