きみは宇宙でいちばんかわいい


「……あのね。きょう、誘ってくれて、ありがとう。はじめての経験ばっかりで、本当に楽しかったし、彩芭くんのこともたくさん知れて、すごく嬉しかったよ。プレゼントのリップも、大切に使うね。ありがとう」


わたしがこんなことを言うのは意外だったのか、彩芭くんは返事をせず、ただ静かに目を見張っているだけだった。

だけど、どうしても言っておきたいことが、もうひとつだけある。


「それと、彩芭くん、前に、自分が何者かわからない、って言ってたけど……」


しゃべりながら、なんだか急に恥ずかしくなってきてしまう。

ちいさく息を吸って、吐いて。
そして、意を決すると、もういちど、口を開いた。


「わたしは、彩芭くんって、何者にでもなれちゃうすごい人なんだなぁって、きょう改めて思ったよ。何色にでも光ることができる、“彩芭”って名前が本当にぴったりの、素敵な男の子だなって」


夏の夕陽が、迷いなく、まっすぐ、こちらにむかって伸びていた。

あまりの眩しさに目を細めたけど、それが太陽のせいだったのか、それとも別のなにかだったのか、本当のところは、よくわからない。


「なな子」


唐突に、名前を呼ばれたのと同時に、そっと手を取られた。

体ごと引き寄せられたことに驚いているまもなく、もうひとつの手のひらで、やさしく頬を包みこまれた、


――次の、瞬間。

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