きみは宇宙でいちばんかわいい
やがて、本当に最前列を陣取ってしまった朝香ちゃんが、足を止めるなり、入場ゲートのほうをまっすぐ指さした。
「ねえ、見て。あそこ、ふたり、一緒にいるよ」
「ええっ、ほんとだ」
朝香ちゃんの言う“ふたり”とは、他でもない、柊くんと、彩芭くんのこと。
青いハチマキに黒髪なのが柊くん、
わたしたちと同じ白いハチマキに、相変わらずの金髪が、彩芭くんだ。
彼らは、所属する団が違っているはずなのに、なぜか待機列の隣どうしにいて、なにか話をしているようだった。
さすがに、声は聞こえないし、けっこう遠い場所だから、表情もよく見えないけれど……。
「これは、ななちゃん的には、ちょっと複雑なんじゃない?」
「えっ!?」
思わず、どっきん、と心臓が大きく跳ねてしまったのを、あわてて取り繕う。
「ど、どういうこと……?」
「だって、同じ組だから、やっぱり久遠くんのこと応援しないとだけど、どうしても織部くんを応援したいと思ってるでしょ?」
「あ……、うん。たしかにそう……かも」
「やっぱりね! こんなにかわいいななちゃんをずっと夢中にさせてるなんて、織部くんも罪な男だなぁ」
戯れるように茶化しながら、無邪気に笑う顔を見て、心臓のあたりがかすかにヒリヒリした。