きみは宇宙でいちばんかわいい
「ななちゃんっ、いよいよ始まるみたいだよ」
「あっ、うん!」
体操着の袖口を引っぱられた瞬間、まわりつづけていた思考を強制的にシャットダウンする。
「にしても、好きな人のアレは、ちょっと刺激が強いね……」
「うう……、ですね」
騎手となる生徒の全員がほぼ同時に肌を露わにしたとたん、集まっているギャラリーのあちこちから、どこか悲鳴にも似た歓声が上がった。
もちろん、朝香ちゃんも、わたしも、そのうちのひとりだ。
体操着どうしを掴みあうと危ないので、特別な理由がない限り、騎手は上半身になにも身に着けないことが、騎馬戦のルール。
わかっていても、見慣れないから、見てはいけないもののような気がしてしまって、なかなかまっすぐ直視できない。
それでも、やっぱり、見ないというわけにいかないし、どうしても、見ずにいられないわけで。
柊くんの、どんどん成長していく引き締まった体にどきどきしつつ、なんとなく、こっそり、彩芭くんにも視線をむけてしまった。
そして、絶句した。
完全に着やせするタイプだ。
彩芭くんは、あんなにかわいい女の子の姿になっているときからは想像もつかないほど、ちゃんと、男の子の体をしている。
喉仏とか、肩幅とか、胸板とか、成長してきていると言っていたけれど、あれは謙遜の一種ではなく、まぎれもない真実だったというわけだ。