きみは宇宙でいちばんかわいい


「あの……でも、彩芭くん、ミスコンに出るってことは、女の子の格好をして、学校のみんなの前に出なくちゃいけないってことなんだよ」

「うん、わかってる」


本当にわかっているのかと突っ込みたくなるくらい、そこまで重大なことでもなさそうに、彩芭くんは、あっけらかんとした様子でうなずいた。

もはや、いまとなっては、わたしのほうが慌ててしまっている。


「彩芭くんは、それは、平気なの……?」

「平気なわけねーじゃん」

「ええっ?」

「でも、きなこちゃんだって、平気じゃないんだろ。だから、俺も平気じゃないことしないと、おあいこになんないよ」


膝の上に置いていた手が、そっと、彩芭くんのそれと繋がった。


「それに、きなこちゃんが一緒に出てんなら、まあ大丈夫かなって」


なんの根拠もないことを、あたかも世界の真理かのように、堂々と言ってのける。


「だから、きなこちゃんも、大丈夫だよ。俺が一緒に出るんだから」


彩芭くんがあまりにも自信満々に言うので、なにが大丈夫なのかぜんぜんわからないまま、またも、ほだされるようにして、うなずいてしまった。




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