きみは宇宙でいちばんかわいい
「はあ、やべえ。もう、あしたじゃん」
フランス人形みたいにかわいい彩芭くんが、おばあさんの持ってきてくれたお煎餅を美味しそうにボリボリ食べながら、唸るように低い声を出している。
こんな光景にもずいぶん慣れてきたけど、あまりにもすべてがちぐはぐなせいで、まだ、たまに、脳がショートしそうになる。
きょうは、いよいよ明日に迫った本番にむけ、彩芭くんの部屋で、いっしょにヘアメイクと衣装の最終確認をしていた。
そういうわけで、いま現在、ふたりとも、ステージに立つ時そのままの姿だ。
「彩芭くん、でも、なんか、ちょっと楽しそうだね」
「うん。なんだかんだ、けっこう楽しんでるかも。話しかけられることも多くなって、学年関係なく、いろんな友達も増えたし」
思わずちいさく笑うと、彩芭くんがそれに気づいて、「なんだよ?」とくちびるをとがらせた。
だって、嬉しそうに笑う顔を見ていたら、なんだか妙に安堵してしまったの。
「転校してきたばっかりのころ、友達なんていらないんだって言ってたの、わたしはほんとに心配してたんだよ」
いまとなっては、もはや、なつかしい。
当時は、いろいろとよけいな心配をして、勝手なお世話なんかも焼いてしまった気がする。
でも、そんなのはただの杞憂でしかなくて、彩芭くんは、わたしの存在なんかなくとも、きっとすごく楽しい学校生活を送れていたのだろう。