きみは宇宙でいちばんかわいい


「うん。全部、きなこちゃんのおかげだと思ってる」


それなのに、わたしの思考とはまったく正反対のことを、彩芭くんがしみじみと言ったので、とても驚いた。


「毎日のランチタイムを快適に過ごせてんのも、広島の遠足が楽しかったのも、テストを無事にパスできてんのも、体育祭で本気だせたのも、いま、自分の思うベストな見た目ぎりぎりで、好きな服着て、文化祭に参加しようとしてんのも」


すべて、あまりにとんでもないことで、どう否定したらいいのかさえ、わからない。

どんどん紡がれていく、どこか穏やかな声に耳を傾けながらおろおろしているうちに、いつのまにか、彩芭くんの手によって指先が捕まっていた。


「いまここで、俺が手にしてるものは、全部きなこちゃんがくれたプレゼントだよ」


ダメ押しのようにそう言った彩芭くんの手元には、ネイルポリッシュがあった。

淡い、すみれ色。

それをたっぷり含んだ小さなブラシを小瓶から引き抜くと、彼はとても繊細な手つきで、わたしの爪に、順番に色を載せていく。


「だからさ、俺は、きなこちゃんに知ってほしいんだ」

「……知、る?」

「だって、自分がどれほど魅力的なのか、きなこちゃんって全然わかってないんだろ」

「う……また、そうやって……」

「からかってないよ」


すべての爪に色がついた指先を、彩芭くんがそっと引き上げたかと思えば、静かに口元へ寄せて。

ふうっ、とやさしく息を吹きかけられたとき、目には見えない、ささやかな魔法にかかった気がした。

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