きみは宇宙でいちばんかわいい
「あ……えと、おはよう。早いね。もう準備できてるの?」
「うん。きなこちゃんの準備、手伝おうと思って」
言いながら、彩芭くんが、わたしの隣にいる柊くんのほうへ、瞳だけをチョイっと向けた。
つられて、背の高い幼なじみの横顔へ、わたしも視線を持ち上げる。
しかし、そのとたん、柊くんは、彩芭くんやわたしから逃げるように、ふいっと顔を背けてしまったのだった。
なんだかとても、ばつの悪そうな顔をしている。
これによく似た表情を、わたしは前にも一度だけ見たことがあった。
柊くんといっしょに、梓ちゃんのネイルサロンに行った夜。
まだ正体を知らなかった、いま目の前にいるこの美少女と、ばったり鉢合わせたときのことだ。
「……どうも。おはよう」
柊くんにむけてそう言った彩芭くんは、なぜか、意味深にきゅっと目を細めた。
「……おう。はよ」
「あからさまに気まずい顔すんね」
彩芭くんは、すでに、柊くんに対して、猫をかぶったようなしゃべり方をしていない。
それどころか、みんなの前では見せないような――普段、わたしの前でしか見せないような、ちょっと意地悪な笑みすら浮かべている。
その様子は、まるで、この混沌とした状況を、とても楽しんでいるみたいだった。