きみは宇宙でいちばんかわいい
「え……いまから?」
「うん。じゃないと、一生言えなくなっちゃう気がするから。このトロフィーに、背中押してもらってるうちに」
ちいさく肩をすくめ、眉を下げて笑った顔を見て、また、胸の奥がせまくなる感覚がした。
それに伴って生まれる、謎の息苦しさをかき消すように、何度もうなずく。
「うん……頑張ってね。成功するように、祈ってるね!」
「……ななちゃん、ありがとう。わたしね、いつも、ななちゃんから、本当にたっくさんの勇気を貰ってるんだよ」
置き土産のように、そっと残されたその言葉に、わたしが戸惑っているうちに、朝香ちゃんは行ってしまった。
すでに遠い場所にある華奢な指先が、少しためらったあとで、相変わらず人気者な転校生の肩を軽く叩く。
彩芭くんは、弾かれたようにふり向くと、彼女の顔を見るなり、とても綺麗に微笑んで返事をした。
朝香ちゃんがなにか伝えると、彼は不思議そうな表情を浮かべながらも、軽快にうなずいたのだった。
そして、連れ立ってどこかへ行ってしまった、ふたりの美少女の背中。
それを、すっかり見えなくなるまで、わたしはここに留まったまま、ずっと見送っていた。
朝香ちゃんの恋が、どうか、うまくいきますように。
心からそう思っているのは確かなのに、なぜ、胸の奥は、苦しいほどに締めつけられたままなのだろう。
一瞬だけこちらをふり返った彩芭くんと、ふいに目が合ったとき、どうして、すごく泣きたいような気持ちになってしまったのだろう。