きみは宇宙でいちばんかわいい


「え……いまから?」

「うん。じゃないと、一生言えなくなっちゃう気がするから。このトロフィーに、背中押してもらってるうちに」


ちいさく肩をすくめ、眉を下げて笑った顔を見て、また、胸の奥がせまくなる感覚がした。

それに伴って生まれる、謎の息苦しさをかき消すように、何度もうなずく。


「うん……頑張ってね。成功するように、祈ってるね!」

「……ななちゃん、ありがとう。わたしね、いつも、ななちゃんから、本当にたっくさんの勇気を貰ってるんだよ」


置き土産のように、そっと残されたその言葉に、わたしが戸惑っているうちに、朝香ちゃんは行ってしまった。


すでに遠い場所にある華奢な指先が、少しためらったあとで、相変わらず人気者な転校生の肩を軽く叩く。

彩芭くんは、弾かれたようにふり向くと、彼女の顔を見るなり、とても綺麗に微笑んで返事をした。

朝香ちゃんがなにか伝えると、彼は不思議そうな表情を浮かべながらも、軽快にうなずいたのだった。


そして、連れ立ってどこかへ行ってしまった、ふたりの美少女の背中。

それを、すっかり見えなくなるまで、わたしはここに留まったまま、ずっと見送っていた。


朝香ちゃんの恋が、どうか、うまくいきますように。

心からそう思っているのは確かなのに、なぜ、胸の奥は、苦しいほどに締めつけられたままなのだろう。


一瞬だけこちらをふり返った彩芭くんと、ふいに目が合ったとき、どうして、すごく泣きたいような気持ちになってしまったのだろう。




< 214 / 285 >

この作品をシェア

pagetop