きみは宇宙でいちばんかわいい
「ななっ、やっと見つけた」
そうしていると、またすぐに、別の人物に名前を呼ばれた。
柊くんは、わたしの顔を見るなり目を細めて、「お疲れ」と「おめでとう」を一気に言ってくれた。
「ありがとう、柊くんもお疲れさま。クラスのほうは、大丈夫?」
「うん、全部終わったよ。ていうか、小宮山さんと久遠は、一緒じゃないんだ?」
「あ、うん……」
なんとも曖昧にうなずきながら、情けない笑顔を作るので精いっぱいだ。
それに、喉に小さなトゲでも刺さっているみたいに、妙に声が出しづらい。
「え? なな置いて、ふたりして、どこに、なにしに行ってんの?」
「ええと、よくわかんない、けど……」
「ふうん……?」
柊くんは、不思議そうな顔で顎をしゃくりつつも、小刻みに何度か首を縦に振ると、その動作の流れのまま、音もなく、横目でわたしを見下ろした。
「じゃ、俺らだけで、行く?」
そして、どこかうかがうような口調で、優しくささやくような音量で、そう言ったのだった。
我が校の文化祭のフィナーレイベントは、学校中がライトアップされて、かなりロマンチックな雰囲気に包まれる。
それもあって、去年は、男女で行動している生徒が、やっぱり多かった気がする。
片想いをしている相手がいる場合、このタイミングで気持ちを伝える人というのも、けっこう多いらしい。
彩芭くんと朝香ちゃんは、きっとふたりで参加するのだろうなと、頭の片隅で思った。
朝香ちゃんの気持ちに、彩芭くんは、なんと答えたのだろう。
ふたりは、いま、どこにいて、なにをしているのだろう。
彩芭くんは、わたしにしたのと同じように、朝香ちゃんにも、キスしたりするのかな……。