きみは宇宙でいちばんかわいい


「なな?」


顔を覗きこまれて、はっとする。

心配そうに眉を下げている柊くんを目の前にしたとたん、わたしはなにを考えてしまっていたのかと、あわてて思考回路をリセットした。


「ううんっ、そうだよね、そうしよう、ふたりで行こう」

「ん。じゃ、いちおう、繋いどく?」

「え……」


ちょっと茶化した感じに笑った柊くんが、なぜか、こちらに、大きな左手を差しだしていた。


「ミスコン7位の子を、手ぶらで歩かせるわけにはいかねーわ」


――ああ、
柊くんは、いつまで、子どもの頃と同じ感覚でいるのかな。


こういう優しさや、甘さを、当然のように与えてくれるところが、ずっと好きだった。

それなのに、いつのまにか、そのすべてが無償であるからこそ、切なくてたまらなくなっていた。


わたしたちは、きっとこのまま、前にも、後ろにも、永遠に進めないのだろう。

それは、柊くんのせいでもなければ、わたしのせいでもなくて、しいて言えば、かぎりなく自然の摂理に近いような、漠然とした現実なのだと思う。


そして、本当は、それでいいのかもしれない。

ひょっとすると、それこそが、わたしたちの本来あるべき姿なのかもしれない。


だって、そうだよ。

初恋の人にとって、大切な幼なじみ、妹みたいな存在でいられるなんて、充分すぎるくらいの幸福なのに、わたしはいままで、これ以上のなにを欲しがっていたというの。

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