きみは宇宙でいちばんかわいい
「……うん、じゃあ、繋いどこうかな」
いつまでも晴れそうにない、深い霧のなかにいるような、どこかもやもやした気持ちごと全部ふり切るように、柊くんの手のひらの上に、自分の右手を載せた、
――瞬間。
「きなこちゃん!」
反対の手首を、いきなり、ものすごい勢いで掴まれた。
思わず後方へよろけてしまう。
なんとか体勢を立て直し、顔を上げると、まだ女の子の姿をしたままの彩芭くんが、息をきらしていたのだった。
「いろ……は、くん?」
「きなこちゃん、織部と一緒に、参加すんの?」
「え……」
「フィナーレ、いまから俺が誘って、まだ間に合う?」
いったい、なにが、なにやら。
自分の身に起こっている現実に追いつけず、頭が混乱しているせいで、言葉も出てこなければ、体のどこかを動かすことすらできない。
右手の先では柊くんが、左手の先では彩芭くんが、それぞれなにかを待つように、息をのみ、深く押し黙っていた。
それは、きっと一瞬にすぎなかったけど、窒息してしまいそうなほどの、重い沈黙だった。