きみは宇宙でいちばんかわいい
「――なぁ。やっぱ、イロハチャンだよな?」
そのとき、まったく聞き覚えのない声が、ほとんど時の止まっているわたしたちの元へ、無造作に投げこまれた。
思わず、3人同時に視線を向ける。
1メートルほど先の近い場所で、他校の制服を着た男の子が、こちらを見ていた。
「ぶは。イロハチャン、マジでグレードアップしてんじゃん。すっげえ」
誰だろう?
せりふからして、たぶん、彩芭くんの顔見知りだとは思うのだけど……。
「あのさぁ、俺さぁ、小学生の頃、あいつとクラス同じだったことがあるんだけど、当時、オトコオンナって、軽くいじめられてたの。日本語も、しゃべってくれるのはいいけど、ところどころ微妙に変でさぁ」
彼は、隣に連れている、うちの制服を着た女子生徒にむかって、そう説明した。
いや、こんなのは、“説明”なんかじゃない。
あまりのことに、きちんと理解が及ばなくて、いまの発言をどう表現すればいいのかさえ、わからないけど。
ただひとつわかっているのは、こんなに悪意のこもった言葉の羅列を、わたしはこれまで一度も耳にしたことがないということだけだ。
「おっまえ、まだそんなカッコしてんだ? ほんと、何から何まで、きもちわりぃね、イロハチャン」
そう吐き捨て、バカにしたように笑った表情を見た瞬間、頭にカッと血がのぼらないわけがなかった。