きみは宇宙でいちばんかわいい
ああ、そうか。
きっと、この人みたいな人間がいたせいで、彩芭くんは、自分を嫌いになってしまったことがあるんだ。
だから、友達なんかいらないと、突っぱねていたんだ。
人間関係が面倒だと、自分を偽っていたんだ。
日本語が得意ではないふりを、わざわざしていたんだ。
自分の素敵なところ、全部を押し殺さないといけないほど、冷たく降り注いでくる心ない言葉の雨に、晒されてきたんだ。
彩芭くんは、ずっと、その寒さと、闘ってきたんだ。
そう。
この人みたいな、人間のせいで。
「――べつに、いいだろうが。似合ってんだから」
それでも、お腹のなかいっぱいに溜まった負の思いを、どうにも言語化できない。
わたしが、慣れない自分の感情にやきもきしているうちに、先に強い声を出したのは、柊くんのほうだった。
「……いや、べつに、似合ってなくてもいいんだよな。とにかく、こっちが好きでやってることを、他人にとやかく言われる筋合ねえよ。だったら、そっちは一体、何様なんだよ?」
もう何年も一緒にいるけど、ここまで激しく怒っている柊くんというのは、たぶん、はじめて見たと思う。
基本が穏やかで、優しい人なので、本当にびっくりした。
「こいつは、ただ好きなことしてるだけで、誰にも迷惑かけてないだろ。俺からしたら、平気で他人のこと全否定できるやつのほうが、よっぽど気持ち悪いよ」