きみは宇宙でいちばんかわいい


そして、いったいどれくらいのあいだ、ふたりして黙りこんでいたのだろう。


「……きなこちゃん」


ふと、グラウンドのほうがぱっと明るくなり、盛り上がりを見せたとき、彩芭くんが唐突に声を出した。


顔を上げた彼の頬に、いくつも、痛々しい涙の痕が残っている。

それを、校庭のライトアップが、場違いに照らしだしている。


そのたたずまいさえ、言葉にできないほど美しく、それが、なんだかいまは、とても恐ろしかった。

このまま、彩芭くんは、光と闇の境目で、溶けるように消えてしまうのではないかと、本気で思ったのだ。


「ごめん。好きなんだ」


この世のものだとはとても思えない横顔を見つめながら、わたしが意味不明の焦燥感に駆られていると、遠くの光源へまっすぐ視線を向けたままの彩芭くんが、いきなり言った。


ひゅっ、と喉が鳴る。

体が、芯からこわばっている。


彩芭くんは、そんなわたしを一瞬だけ見たけれど、すぐに目を伏せ、どこか自嘲するみたいに、薄く笑った。


「ずっとさ、あいつより、俺のほうがいいって思ってたよ。自信があったんだ。織部柊に限らず、世界中の誰より、俺と一緒にいるのが、きなこちゃんにとってベストに決まってる、って」


グリーンのアイシャドウに含まれた、細かなラメが、かすかにまたたいている。

きっと、これは外界の明かりのせいでなく、彼の瞳に残った涙が原因だろうと、素っ頓狂なことを頭の片隅で思った。


「でも、そんなのは、俺の思い違いだった」


彩芭くんはきっぱりと言いきった。

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