きみは宇宙でいちばんかわいい
だから、いまとなっては、不思議にさえ思うよ。
なぜ、わたしはこれまで、あんな人と普通に接してこられたんだろうって。
たまたま、席が前後になったから。
それで、話すきっかけが生まれたから。
彩芭くんにとって、わたしはとても、使い勝手がよかったから。
たぶん、本当に、それだけのことだった。
きっと、眩しさや華やかさの真ん中に身を置きつづけてきた彼にとって、わたしみたいに地味なのは、かえって新鮮で、ものめずらしかったのかもしれない。
王宮での暮らしに飽き飽きした貴族が、平民の暮らしにうっかり憧れてしまうような、そういう、おとぎ話的感覚だったのだろう。
転校してきた日、歓迎のまなざしを一身に受け、すぐに人気者になっていた彩芭くんの姿を思い出したら、いきなり、長い迷路を抜けたような気がした。
きっと、わたしたちは、異常な世界から、正常な世界に戻ってきたのだ。
そうだ、これで、ちゃんと正解だ、と。
いま、元通りの光に満ちた場所で、多くの人に囲まれ、慕われ、愛されている彩芭くんも、きっと、その真実に、気づいているはずだ。