きみは宇宙でいちばんかわいい
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とても、平和な毎日が続いている。

高校2年生に上がった朝から、文化祭の夜まで、ずっと騒がしくて、せわしなくて、それに慣れてしまっていたせいで、なかなか気づくことができなかったけど。


日常から彩芭くんがいなくなったかわりに、わたしのところに戻ってきてくれたのは、以前と変わらない穏やかな日々。


柊くんと一緒に登校して、何事もなく学校生活を終えて、家に帰ると、たまにお兄ちゃんに意地悪をふっかけられたりして。

ささいな喜怒哀楽はあるけれど、激しく感情が揺さぶられたり、大きな事件が起こったりすることもない。


これこそ、まさに、彩芭くんにいろいろとふりまわされていた頃、わたしが心から望んでいたことだった。



彼と出会ってからの半年あまりは、比喩でなく、本当に、夢みたいに素敵な時間だったなぁ、と何度でも思う。


全部が新しくて、色鮮やかで。

いくつもの、すごく貴重な体験をさせてもらったし、
初めてのことに、いつもどきどきしっぱなしだった。


きっと、これから先ずっと続いていく人生のなかでも、ふとした瞬間、何度も思い出しては、尊く、懐かしく、愛しく感じるのだろう。



そう。わたしに合っているのが、地味で、平凡で、なんでもない、だけどかげがえのない、そんな毎日だからこそ。




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