きみは宇宙でいちばんかわいい





「――ななちゃん。少し歩いたところに、星が綺麗に見える場所があるんだって。ちょっと行ってみない?」


ホテルでの夕食後、朝香ちゃんがワクワクを隠しきれない様子で、そう言った。

ほとんどの生徒が大浴場に向かうなか、やりすぎなくらいの防寒対策を済ませ、澄んだ冬空の下に出る。



修学旅行の行き先が12月の北海道だなんて、凍って死んでしまうかもしれない、とばかみたいな心配をしていたのは、飛行機を降りる前までだ。


空気は綺麗だし、食べ物は美味しいし、景色は美しいし、人は優しい。

はじめて降り立つ北の大地は、寒さなんて忘れてしまうほど、素晴らしい場所だった。



「……とはいえ、夜は、特に冷えるねぇ」

「うん。ずっと外にいると、さすがにね」

「あ。そうだ、カイロあるよ。いっしょに使おう?」


差しだされた温もりの上に、素直に手のひらを載せるなり、そのまま指先ごと捕まってしまう。

朝香ちゃんはいたずらっ子のようにニシシと笑い、「このほうがあったかいでしょ」と、わたしの手を引っぱったまま歩いた。


いまの外気温は、たぶん、氷点下だろう。

だから、ついうっかり泣いてしまいそうなのは、そのせいだと思いたい。

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