きみは宇宙でいちばんかわいい


いつのまにかわたしも泣いてしまっていた。

すべてが制御不能になり、どうしようもなく落ちてくるものを拾いあげることさえ、いまはままならない。


「ミスコンがはじまる前、教室で、ななちゃんがわたしを庇ってくれたの、じつは聞いてたんだ。こっそり泣いちゃうくらい、本当に、すごく嬉しかった」


朝香ちゃんは、じれったそうに指で乱暴に涙を払いながら、何度も鼻をすすっては、嗚咽して、たどたどしく、それでいて、一音ずつをはっきりとしゃべった。


「ミスコンを全身全霊で頑張ろうって思えたのも、久遠くんに気持ちを伝えようって勇気が持てたのも、全部、ななちゃんの言葉があったおかげだったよ」


涙に濡れた瞳が、澄んだ冬の空気のなかで、まっすぐわたしを見つめている。

朝香ちゃんは、やっぱりなにもかもが綺麗な女の子だって、悲しいほどに思った。


「わたしと同じように、ななちゃんの優しい心や、気遣いの言葉に救われてきた人が、他にもきっとたくさんいると思う。それでね、どうしても、いちばん最初に、久遠くんの顔が浮かぶの」


すごく、胸が痛い。

凍った外気が氷柱となり、まるで、肺に刺さってきているみたい。


どうにもいたたまれなかった。

本当に、一刻も早く、消えてしまいたかった。


わたしは、こんなふうに言ってもらっていいほど、善良な人間ではないのに。

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