きみは宇宙でいちばんかわいい
お互いに腕をほどき、顔を見合わせる。
せっかくのかわいい顔が、寒さと、涙で、ひどいことになっている。
朝香ちゃんでこれなのだから、わたしのほうは、見るにたえない仕上がりになっているはずだ。
考えていることがまったく同じだったのか、思わずプッと吹きだしたのは、どちらからともなかった。
「ねえ、ななちゃん」
「うん」
「最後にひとつだけ、聞いといてもいい?」
朝香ちゃんは、少しだけフランクな感じに、言葉尻を弾ませた。
「ななちゃんは、たとえ相手から迫られたとしても、なんとも思ってない男の子とデートしたり、手を繋いだり、キスしたり、そういうことができちゃう女の子ではないと思ってるんだけど、ちがう?」
「え、どういう……」
「だからね、ななちゃんの“好きな人”って、いまも織部くんのままなのかなぁって」
そんなの、考えたこともなかった。
これまで、柊くん以外の誰かを好きになった経験が、一度もないから。
なんて、ただの、へたくそな言い訳だ。
必死に考えないように、見ないようにしていただけで、本当はずっと、心のどこかで、わかっていた。