きみは宇宙でいちばんかわいい
彩芭くんと、いくつもの同じ時間を過ごしてきたこと。
そのなかで、もどかしく、触れあったこと。
ずるくて最低なわたしは、そのすべてを、いつも彼のせいにしてきたけど、そんなわけがないって。
そうだよ。
ただ、わたしが、彩芭くんと一緒にいたかった。
彼のことを、受け入れたいと思っただけだ。
そんな気持ちを何と呼ぶのか、わたしは、本当は、知っている。
「ねえ、ななちゃん。好きな人、誰なのか、こっそり教えてよ」
すっかり涙の乾いたらしい朝香ちゃんが、どこかわざとらしく声をひそめて、にやりと笑う。
急に意地悪で、びっくりする。
だけど、これは、もしかすると朝香ちゃんなりの仕返しで、そして、この上ない優しさなのかもしれない。
「……言わないと、だめ?」
「当たり前だよ。だって、修学旅行の夜だよ?」
そっと、その名前を口にしたとたん、体の奥底でずっと眠っていた臓器が、息を吹き返したような、新しくてくすぐったい、懐かしくてあったかい、そういう感覚がした。