きみは宇宙でいちばんかわいい


終業式だったので、午前のうちに下校し、お昼頃に帰宅すると、兄がいた。

大学のスケジュールのことはいまいちよくわからないけど、こんなふうに、昼間からお兄ちゃんがソファにふんぞり返っていることなら、しばしばある。


いつも意地悪されっぱなしなのは確かだけど、「ただいま」と「おかえり」を言いあうくらいには、兄妹の関係は良好だ。


「昼メシ、食ってきた?」

「ううん、まだ」

「チャーハンでいいなら、いまから作ろうと思ってたとこだけど、ななも食う?」

「え、いいよ。それなら、わたしが作る」

「なんでだよ」

「だって、お兄ちゃんが作るより、ななが作ったほうが、絶対おいしいもん」


普段のアレコレに対する多少の復讐のつもりで言ったのに、「もうガキじゃないんだから自分のこと『なな』って言うなよ」なんて、オーバーキルの揶揄が返ってくる。

つい口をついて出てしまった、幼い頃からの癖を後悔しつつ、昼食の準備に取りかかった。



あとで、ごはんを食べたら、彩芭くんに、メッセージを送ろう。

帰国してしまう前に、ほんの少しでいいから、わたしに時間をくれませんかって。


直接話すことが苦手なわたしにとって、自分の気持ちを文字に起こし、リアルタイムで相手に伝えることのできるスマホというツールは、本当にありがたいなぁと、しみじみ思う。

それでも、どうしても、ちゃんと顔を見て伝えたいと思う気持ちが、いま、その先に、たしかにあるのだ。

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