きみは宇宙でいちばんかわいい
「あ。そういえばさぁ」
けっこうな量のチャーハンを、あっというまにぺろりと平らげてしまったお兄ちゃんが、なにかをふと思い出したように、いきなり声を上げた。
「おまえ、いつのまに、どこぞの女に、柊のこと横取りされたんだよ?」
「……え?」
「こないだ完全に遭遇したわ、デート現場。俺の妹を差し置いて、他の女とよろしくやってるとかありえねーから、盗撮してやった」
本気とも冗談とも取れないトーンでしゃべると、お兄ちゃんは、自身のスマホを操作しはじめた。
使い終わったふたり分の食器類をシンクに運びながら、そんなのは、まったく気にしていないふりをする。
「てか、その反応、ななは、なんも知らねーの?」
「……うん」
「ええ? マジかよ? 柊って、ああ見えて、けっこうやり手?」
軽く笑いながら、「連れてる子もめちゃくちゃかわいかったし」と、何気なく付け足される。
そして、すぐに「ほれ」と目の前に差しだされた液晶を見たとき、いま、両手になにも持っていなくてよかったと、心から思った。
数秒前なら、わたしは確実に、お皿を2枚、割ってしまっていたはずだ。