きみは宇宙でいちばんかわいい
「ななもさぁ、そろそろ本格的に、柊以外の男にも目を向けたほうがいいんじゃねえの」
お兄ちゃんの言葉が、なにひとつ、耳に入ってこない。
聴覚が鈍っているかわりに、視覚だけが、異様に冴えている。
とにかく、なんといってももう、画面から目が離せなかった。
柊くんの隣に寄り添い、楽しそうに歩いているのは――女の子の姿をした、彩芭くんだったから。
「……お兄ちゃんって、いつもほんとうに、よけいなことばっかり、する」
「は?」
なにもかもが、まったくもって、意味不明だ。
柊くんと、彩芭くんは、どういう関係なの?
どうして、こんなにも仲良さげに、歩いているの?
どうして、彩芭くんは、わざわざ女の子の格好をしているの?
「だから、ななは、お兄ちゃんのこと、大嫌いなの、ずっと昔から」
これこそ、本当に最低で、救いようがないな。
あまりのショックで、混乱しきり、だからといって、感情のやり場がわからないまま、まったく無関係のお兄ちゃんに、こんなふうに当たり散らすなんて。