きみは宇宙でいちばんかわいい
「言っとくけど俺も、ななと同じ高2のとき、彼氏候補みたいな男がいる子を好きになったことがあるからな。それでも、なんとかしてデートの約束まで取りつけた。まあ、その子は結局ダメだったんだけど、ベストは尽くしたから、なんの後悔もなく、次に進めてる」
いま、大学で出会ったという、かわいい彼女のいる、お兄ちゃん。
お兄ちゃんは、中学の頃から常に誰かとつきあっているイメージがあるから、女の子にふられたことがあったなんて、知らなかった。
「だから、ななも、遠慮してんなよ。もっと貪欲になれ」
ぐしゃりと乱暴に頭を撫でられたとき、兄にだけは、きっと一生をかけても敵わないだろうな、と思った。
「……髪の毛、乱れるから、やめてよ」
これだから、うちは、お兄ちゃんの独裁政権が終わらないんだ。
でも、それはごくたまに、民衆のわたしを守るためにも機能してくれるから、べつに、無理して倒さなくてもいいのかもしれない。
ずっと、倒さないままで、いいのかもしれない。
その夜、寝る準備まで万全に整えたあと、さんざん迷いながらも、意を決し、彩芭くんに連絡することにした。
ああでもない、こうでもないと、メッセージを打ちこんでは消していた、真っ只中のこと。
【なな、明日、会える?】
【話したいことがあるんだけど】
突然、柊くんから、そんなメッセージが届いたのだった。