きみは宇宙でいちばんかわいい


それでも、柊くんは、わたしの初恋の人で、
そして、彩芭くんは、わたしがいま好きでいる人だ。


さすがに、ちょっと気が気じゃなくて、朝ごはんはほとんど喉を通らなかった。

挙句の果てに、歯みがき粉と間違えて、歯ブラシに洗顔フォームを乗っけてしまう始末。


漫然としながらも、なんとかセーターに着替えて、寝ぐせを整える。

これから告げられるのであろう現実を受けとめるための、せめてもの備えとして、お気に入りのボアのモコモコジャケットで全身を守ると、いよいよ玄関のドアを押し開けた。


「――なな。おはよ」


織部柊くんは、すでに、我が家の門の前に立っていたのだった。

冬独特のやわらかな朝陽が、漆黒の髪を穏やかに照らしている。


「お、おはよっ」


面食らって、ついどもってしまった。

眉を下げた柊くんが、ちいさく笑った。


「私服どうしなの、すげー久しぶりだよな。ななんち迎えに来るとき、いつも制服だから、なんか変な感じする」


いつもと変わらない、笑顔、口調、声色。

ものすごく緊張して、どこか身構えていたのが、ほんの少しだけ解けていく。


「あの、柊くん、話というのは……」

「うん。俺、ちょっと行きたいとこあるんだけど、いい?」

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