きみは宇宙でいちばんかわいい


「昔から、ななって、なんか放っておけない女の子だったよ」


きっといま、同じ記憶の引き出しを開けているはずの柊くんが、じみじみと言った。

彼の視点から見る思い出のなかで、わたしはいったいどんな顔をしているのだろうかと、覗きこんでみたい気持ちになる。


「悟朗くんに泣かされては、いつも俺のところに助けを求めに来るななのことが、妹みたいにかわいくて、ずっと俺が守ってやるんだって、幼いながらに思ってた。その気持ちは、どんなにデカくなっても変わらなかったよ。ほんと、ついこないだまで、俺は、本気でそう思ってたんだ」


思わず、びく、と肩が跳ねてしまう。


「でも……いきなり久遠が現れて、全部が変わった」


そして、きっぱりとそう言われたとき、持ち手の鎖を、無意識のうちに強く握りしめてしまっていた。


うん、大丈夫。
心の準備はできている。

わたしは、ふたりの恋を、ちゃんと祝福できる。


「久遠とななが、どんどん近づいていくのを見て、やっと気づいた。ななは、俺にとって、すごく大事な女の子だったんだ……って」

「――え……?」


痛いほどに握りしめていたはずの両のこぶしが、握力の行き場を失い、ゆるゆると開いていく。

なにを言われたのか、咄嗟に理解できず、わたしは完全に混乱していた。

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