きみは宇宙でいちばんかわいい
すっ飛んで帰宅すると、リビングで、お兄ちゃんがのんきにモーニングコーヒーを飲んでいるところだった。
ちょうどよかったと思い、まだスウェットを着たままの、兄の正面に回りこむ。
そして、オハヨウもなしに、いきなり大声を浴びせた。
「お兄ちゃんっ、ここから空港まで、初心者マークがついたお兄ちゃんの運転で、どれくらいかかる?」
「……はぁ? 空港って?」
「いいからっ、どれくらいかかるか教えて!」
「ええ……? まあ、高速乗って、普通に運転して、一時間くらい、か……?」
頭のなかで空港までのルートを辿っているらしい、運転免許を取りたての兄は、まだ完全には目が覚めきっていない様子だ。
でも、そんなの、知ったこっちゃない。
そもそも、お昼近くまで寝ているなんて、ダメ大学生の典型みたいな、堕落した生活を送っているほうが悪い。
「いますぐ連れてって!」
「は? いきなり、なんだよ? 空港に用でもあんの?」
もちろん、用があるから頼んでいるに決まっているのに、本当にわからず屋。
それでも、気持ちばかりが焦り、うまくしゃべれずに地団駄を踏んでいると、お兄ちゃんはシラけた目をして、再びマグカップに口をつけた。