きみは宇宙でいちばんかわいい


「いろは、くん」


あれは、彼だ。

絶対に、そうだ。


だって、あの場所だけ、光り輝いている。


これまで、それは彼の持つ美しさのせいだとばかり思っていたけど、本当は、わたしが彼に恋をしているから、そんなふうに見えているだけなのかもしれない。


「彩芭くん……」


彼は、傍らにスーツケースを持っていた。

よかった。
きっと、まだ間に合うはずだ。


「彩芭くん」


ああ、ぜんぜんダメ。

こんなんじゃ、ぜんぜん、届かない。



「――久遠彩芭くんっ」



人目をはばからず、精いっぱいの大声を出した。

名前の持ち主が、弾かれたようにこちらをふり返ったとき、もうすでに、わたしの両脚は、彼に向かって駆けだしていた。


いまは、もう、誰の目も気にならない。


「え……? き、なこ、ちゃん?」


勢いあまって、スーツケースごと彼を押し倒し、その上に乗っかる体勢になってしまう。

そんなわたしのことを、彩芭くんは、とても信じられないという表情で、じっと見つめていた。


相変わらず、言葉にできないくらい、美しい顔。

でも、いま胸が高鳴っているのは、それが理由ではない。


目の前に、好きな人がいる。

こんな、世界中の人があふれかえる混雑のなかで、こうして会うことができた。

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