きみは宇宙でいちばんかわいい
「なな子が好きだよ」
「わたしも、彩芭くんのことが、好き」
額どうしを優しくぶつけあう。
嬉しくて、くすぐったい。
それに、ほんのちょっと照れくさくもあって、しばらくのあいだ、ふたりで笑いあった。
やがて、頭上から外されたマフラーは、彼のほうでなく、なぜかわたしの首に下りてきていた。
すごくあったかいし、やわらかい手ざわりで、なにより彩芭くんの優しい匂いがするから、どきどきする。
「きなこちゃん、首元、寒いだろ。使っていいよ」
「えっ?」
たしかに、セーターも、ジャケットも、首元の開いているデザインなので、そう言われてみれば、肌寒い気もするけど……。
「これ、貸してあげるから、巻いて帰って」
「ええっ? でも、しばらく会えないんだし、返せなくなっちゃうよ」
「そう? 飛行機で、たった16時間だよ」
ひょっとすると、彩芭くんは、“たった”という日本語を、間違って覚えているのかな?
それとも、ワールドワイドな人材というのは、みんなこういう感覚で生きているもの?
「――大丈夫。また、すぐに会えるよ」
意気揚々とそう言った彼は、搭乗ゲートをくぐる前、わたしの額にかわいいキスを残し、日本を飛び立っていったのだった。