きみは宇宙でいちばんかわいい
キャラメルマキアートをストローで吸い上げながら、ふてくされたように、長いまつげを伏せる。そんな久遠くんの背後に、席へ戻ってきている柊くんが見えた。
「あれ。ななも、久遠も、大丈夫? 手、止まってるっぽいけど……」
一言目のせりふが、もう、優しさそのもの。
心配そうにわたしたちの手元を覗きこんでくれるところに、ひとりで勝手にときめいていると、久遠くんが椅子を道づれにして、柊くんの傍へ近寄っていったのだった。
ちゃんと完璧に猫をかぶり直しているのが、表情から見てわかる。
いつのまに。
本当に、さすがとしか言いようがない。
「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「ん、俺にわかるところなら、なんなりと」
「ここの、現代語訳なんだけど……」
そうはいっても、かわいこぶった久遠くんと、面倒見のいい柊くんは、なかなか波長が合うようだった。
久遠くんは古典を、柊くんは英語を、時折お互いに質問しあっては、リズミカルに問題をクリアしていく様子は、見ていてすごく微笑ましい。
それを眺めながら、ひょっとするとふたりはいい友達になれるんじゃないかなぁ、と、なんとなく思った。
男の子どうしだし、どうだろう。
柊くんは、猫をかぶっていないほうの久遠くんと出会ったとしても、きっとまるごと受け入れるどころか、もっと仲良くしたいと思ってくれる人なはず……。