きみは宇宙でいちばんかわいい
「なな。ぼうっとして、大丈夫?」
「えっ」
はっとして、思わず肩を跳ねさせたのと同時に、まったく力の入っていなかった手がシャーペンを落としてしまった。
ころころと転がっていったそれを、呆れたように笑った柊くんが、しっかり拾いあげてくれる。
「もしかしなくても、行き詰まってる?」
「あ、ううん……、ぜんぜん、久遠くんの古典が終わってからで、わたしは大丈夫なので」
「なんでだよ、いいよ。こっちはひと段落したし、今度はななのほう見るから」
優しくそう言い、丁寧に、シャーペンを手のひらまで届けてくれた。
かと思えば、柊くんは体ごとこちらへやって来て、わたしに身を寄せるように隣の席に座ったので、心臓が口から飛び出すかと思った。
「ん、どこがわかんなかった?」
随所で、距離感が壊れているなぁ、と感じてしまう。
柊くんはいちいち本当に近いのだ。
もう高校生なのだから考えてほしいものだけど、何年もいっしょにいるくせに、いまだに懲りずにどきどきしているわたしも、大概なのだろう。
「あの、えと、ここ……」
「この式の展開?」
「うん、柊くん、わかる?」
「ちょっと待ってな、一緒にやるわ。先に解いていい?」
そう言うなり、すぐ傍にある横顔は黙りこんでしまい、真剣に問題を解きはじめた。