170回、好きだと言ったら。
あたしは腰に学校の体操着の上着を巻きつけると、テルくんの手を借りてバイクに跨る。
遠慮なく目の前の背中に抱き着けば「実衣、胸ねえ」と言われてガーン!と分かりやすいくらいショックを受けた。テルくん…女の子に対してその台詞はないんじゃないの!?
「…落ちたらあれだろ、絶対手ぇ離すな」
「…っ! うん!」
「実衣、うるさい」
「ええ!??」
時々見せるテルくんの優しさに、あたしはいつも振り回されている。
いつの間にかあたしの身長を追い越して、気づけばバイクまで手に入れて。
知らないテルくんが増えていくのを、あたしは知らん振りするしかなかった。
―高校二年生、春。あたし達は少しずつ大人への階段を上りだすんだ。