170回、好きだと言ったら。
何も言わないテルくんは、きっと緊張を取り除くために手を握ってくれたのだ。
まるで彼女みたい…、何て思ってしまったあたしは自意識過剰なのかも知れない。
「何や、照道やないか。休日に何しに来たん…って。その子―」
「「「頭、こんちはーッス!!」」」
「……俺の幼馴染の沖宮、飛澤ンとこが最近動き出してるから、一応紹介しとく。…何かあったら護れ」
「……あ」
思わずあたしが視線を向けた先は、先ほどからこちらを凝視する背の高い男性だった。
テルくんのことを名前で呼んでいるあたり、テルくんと親しい人なのだろう。
だけど―、あの人は確か…。
「アンタ…、アイツとおった女やんか」
「…あ? 何の話だよ、佐久間」
「やから、火鎖我族の副総長とおったんや!
前に俺が追っかけとったとき…、照道が病院行っとった日―」
「……実衣、てめぇ知り合いなのかよ?」
「!!」
ぎり、とテルくんがあたしの手を握った。
あまりの強さに驚いたが、それよりもテルくんの低い声に言葉が出てこない。
「…いつ、知り合った?」
「照道! まずは話聞かんと…」
「うるせぇ黙れ。実衣、答えろ」