170回、好きだと言ったら。
パンパン!と手を叩いた佐久間と呼ばれた男性が、場の空気を戻すように声を出した。
「各自元の場所に戻ってくれへんか。
女の泣き顔見たいヤツはここから出て行け」
ばたばたとあたしの周りにいた人達が元居た場所へ戻っていった。
目の前まで近づいてきた佐久間さんは、あたしを見下ろして「大丈夫かいな」と先程と比べて随分と優しい声音で訊ねてきた。
「まあ立ったままやとしんどいやろ。
人に見られてんのも嫌やろうし…、二階行って落ち着くか?」
一度だけ頷いたあたしを見て、佐久間さんは「オーナー、二階借りるで」とカウンターに声をかけた。
そちらへ視線を向けると、あたしは目を見開く。
大人の女性、という表現がぴったりなほど、とても美人な女性がバーでカクテルを作っていた。
あたしと視線が合うと、ぱちりとウインクをして「OK、ご自由に」と手を振った。